COLUMN

AIで自動化してええ作業と、
人がやったほうがええ作業

分ける基準は1つだけです。間違えた時に、やり直しが効くかどうか。

2026年9月6日  /  libertyworks 鈴木 圭一

自動化してよいのは、集める、下書きを作る、並べ替える、仕分ける、見張る。この5つまでです。出す、断る、値段を決める、約束する。この4つは人に残してください。

線はここに引きます

具体的な作業間違えた時
AIに任せる集める/下書きを作る/並べ替える/仕分ける/見張るやり直しが効きます
人が残す出す/断る/値段を決める/約束する取り返しがつきません

下書きを間違えても、書き直せば済みます。送信ボタンを間違えて押したら、送った先から消せません。同じ「文章を作る仕事」でも、この2つはまったく別の作業です。

判断まで任せた会社が、実際に負けています

カナダの航空会社が、自社サイトのチャットボットに料金の案内をさせていました。ボットは実在しない割引を案内し、客はその案内を信じて航空券を買いました。

会社は「チャットボットが勝手に言ったことだ」と主張しましたが、2024年2月、ブリティッシュコロンビア州の民事解決審判所はこれを退けています。自社サイトに載っている情報は、静的なページであれチャットボットであれ、会社が責任を負う。会社に812カナダドルの支払いが命じられました。

もう1件あります。ある決済サービスの会社が、カスタマーサポート700人分の仕事をAIに置き換えたと発表しました。応対時間は11分から2分に縮み、年間で約4,000万ドルの削減効果が見込まれました。

ところが2025年5月、同社のCEOは方針を戻しています。効率とコストを見すぎた結果、品質が下がった。AIは件数はさばけても、込み入った案件と感情の絡む応対でつまずきました。今は、定型はAI、判断が要るものは人、という形に組み直されています。

どちらも、AIの性能が足りなかったのではありません。人に残すべき仕事を渡したことが原因です。

うちが実際にどう作っているか

libertyworksが動かしている仕組みを3つ、そのまま出します。

仕組みAIがやること人が残していること
店舗のGoogleビジネスプロフィール投稿天気を見て投稿文を作る(5日おき)オーナーが承認ボタンを押すまで、外に出ません
工事写真の自動仕分け図面と照合して仕分ける確認は人。自動で確定させません
日刊ニュースレターの原稿づくり記事を集めて原稿まで書く配信ボタンは人が押します

3つとも、最後の1手だけを人に残してあります。そこまでの9割は自動です。

「人が押すなら自動化の意味がないのでは」と聞かれます。逆です。押すだけの状態まで持っていくのが自動化で、押すかどうかを決めるのが人の仕事です。投稿文をゼロから書く10分は消えて、目を通して押す10秒だけが残ります。

よくある失敗を2つ

1つ目は、全部いっぺんに自動化しようとすることです。作業を5つ並べて全部を仕組みにすると、どれか1つが必ず詰まります。詰まった時、5つのうちどれが原因か分かりません。まず1つだけ、毎日やっていて一番うんざりしている作業から始めてください。

2つ目は、止まっても誰も気づかないことです。これはうちも踏みました。ある自動処理が6日間続けて失敗していたのに、記録には毎回「成功」と残っていました。中の処理が失敗しても、外側のプログラムは正常に終了していたためです。エラーが出ないので、通知も鳴りません。

自動化した仕組みは、失敗した時より静かに止まった時のほうが厄介です。うちは今、処理ごとに「対象が何件あって、何件成功して、何件失敗したか」を1行ずつ記録に残す形にしています。動いていることを、目で確かめられるようにしておいてください。

自動化しないほうがよい作業

次に当てはまるものは、仕組みにしても割に合いません。

  • 月に数回しかやらない作業。手でやったほうが早く、作る費用も回収できません。
  • 毎回やることが変わる作業。型が決まっていないものは、決めるところから始まります。
  • 間違えた時に謝って済まない作業。請求、契約、個人情報の扱いがここに入ります。

とくに3つ目は、性能の問題ではありません。「AIが言ったので」は通用しません。責任は会社に来ます。

迷った時の1問

作業を1つ思い浮かべて、これだけ問うてください。

これを間違えたまま外に出たら、取り消せますか。

取り消せるなら、自動化してかまいません。取り消せないなら、そこに人を1人置いてください。置くのは工程の最後の1手だけで足ります。

libertyworksは、店舗や中小企業の業務効率化アプリとホームページを作っています。「この作業、自動化できますか」のご相談だけでもかまいません。

無料で相談する

この記事で触れた事例の出典
Moffatt v. Air Canada(ブリティッシュコロンビア州民事解決審判所・2024年2月)CBC News
Klarna のカスタマーサポート方針の転換(2025年5月)Forbes